聴覚障害者向け老人ホームの数と施設の選び方について解説

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聴覚障害者向け老人ホームの数と施設の選び方について解説

こんにちは。福岡介護ナビ、運営者のnishiです。

「親が聴覚障害を持っているのですが、受け入れてもらえる老人ホームはあるのでしょうか」「手話のできるスタッフがいる施設ってどれくらいあるの?」——こんなご相談を受けることが増えています。

聴覚障害者向け老人ホームの数は、実は全国でも非常に限られています。専門施設はわずか10施設前後しかなく、多くの地域では聴覚障害のある高齢者が一般の老人ホームへの入居を余儀なくされているのが現状です。手話によるコミュニケーションが取れない環境に入居した場合、孤立感や精神的なストレスが大きくなることも少なくありません。

この記事では、聴覚障害者向けの老人ホームが全国でどれくらいあるのか、どんな施設の種類があるのか、そして一般施設も含めた施設選びのポイントをわかりやすくお伝えします。福岡にお住まいの方に役立つ地域情報もまとめましたので、ぜひ最後までお読みください。

記事のポイント

  • 聴覚障害者向け老人ホームの数は全国に10施設ほど
  • 福岡には九州唯一の聴覚障害者専用養護老人ホームがある
  • 一般施設でも手話スタッフや設備面の確認で選択肢は広がる
  • 費用・入居条件・相談窓口を事前に把握しておくことが重要

聴覚障害者向け老人ホームの数と全国の実態

聴覚障害者向け老人ホームの数と全国の実態

まずは、聴覚障害者向け老人ホームが日本全国にどれくらい存在するのか、その実態を確認していきましょう。数の少なさを知っておくことが、施設選びの第一歩になります。

全国の専門施設は10施設ほどにとどまる

聴覚障害者が手話でコミュニケーションを取りながら生活できる専門の老人ホーム——いわゆる「ろう老人ホーム」や「聴覚障害者養護老人ホーム」——は、2023年時点で全国におよそ10施設前後しか存在しません。「全国高齢聴覚障害者福祉施設協議会」が把握している施設数は、8法人10施設程度とされています。

日本全国の市区町村数が1,700を超えることを考えると、いかに数が少ないかがわかります。都道府県によっては専門施設がまったく存在しない地域も珍しくなく、遠方の施設に入居するために住み慣れた地域を離れなければならないケースも報告されています。

一方で、手話対応のスタッフを配置している一般の老人ホームや、聴覚障害者の受け入れに積極的な施設も少数ながら存在します。専門施設にこだわらず、コミュニケーション支援の体制が整った一般施設も選択肢に加えることが、現実的な施設探しにつながります。

聴覚障害者向け専門施設は、養護老人ホームタイプと特別養護老人ホームタイプに大別されます。どちらも定員は30〜50名程度の小規模施設が多く、全国的に空き待ちが発生しているのが現状です。

養護老人ホームと特別養護老人ホームの種類

聴覚障害者向けの老人ホームには、大きく分けて「養護老人ホーム」と「特別養護老人ホーム(特養)」の2種類があります。この2つは制度上の位置づけや入居条件が異なりますので、混同しないよう整理しておきましょう。

養護老人ホームとは

養護老人ホームは、老人福祉法に基づく措置施設です。「措置施設」というのは、市区町村(福祉事務所)が必要と判断した場合に入所を決定する仕組みのことで、利用者が直接申し込むのではなく、行政機関を通じて入居手続きが進む点が特徴です。

入居対象者は、65歳以上で身体障害者手帳(聴覚・言語障害)を持ち、環境上の理由と経済的な理由から家庭での生活が難しいと認められた方です。費用は前年の所得に応じた応能負担となっており、収入の少ない方であれば比較的低い費用で利用できる制度設計になっています。

特別養護老人ホーム(特養)とは

特別養護老人ホームは、要介護3以上の認定を受けた方が入居できる介護保険施設です。聴覚障害者向けの特養は全国でも数施設しかなく、埼玉県の「ななふく苑」(2006年開所)は聴覚障害者向け特養として全国で5番目に設立された施設として知られています。

費用は要介護度や収入に応じた介護保険自己負担額と、居住費・食費などが合算された形になります。特養全体の費用水準は有料老人ホームに比べて低めですが、聴覚障害者向け専門施設は絶対数が少なく、希望してもすぐに入居できないことがほとんどです。

全国各地に点在する専門施設の主な事例

全国に10施設ほど存在する聴覚障害者向けの専門老人ホームについて、代表的な施設をご紹介します。どの施設も手話を使えるスタッフを配置し、聴覚障害者が安心して生活できる環境を整えています。

都道府県施設名種別特徴
北海道聴覚障害者養護老人ホーム やすらぎ荘養護老人ホーム道内唯一の聴覚障害者専門施設。全国から入居希望あり
大阪府特別養護老人ホーム あすくの里特別養護老人ホーム大阪聴覚障害者福祉会が運営
高知県聴覚障害者養護老人ホーム 静幸苑養護老人ホーム四国地方の拠点施設
埼玉県ななふく苑特別養護老人ホーム聴覚障害者向け特養として全国5番目に設立
福岡県田尻苑(聴覚言語障害者養護老人ホーム)養護老人ホーム九州初・定員50名。1992年開設

このように、専門施設が存在する都道府県は全国的に見ても限られています。近隣に専門施設がない場合、居住地域を管轄する市区町村の福祉事務所に相談することで、遠方の施設への措置入所が認められるケースもあります。

また、上記の一覧はあくまで私が把握している主要施設の一部です。全体像を把握するには、各都道府県の聴覚障害者センターや福祉事務所に問い合わせることをおすすめします。

施設数が少ない背景と今後の課題

なぜ聴覚障害者向けの老人ホームはこれほど少ないのでしょうか。その背景には、制度的・財政的な複数の要因があります。

まず、聴覚障害者の高齢化は近年急速に進んでいますが、専門施設を新設するためには大きな初期費用と専門人材の確保が必要です。手話のできる介護職員は絶対数が少なく、採用・育成にも時間とコストがかかります。

次に、養護老人ホームは措置制度に基づく施設であるため、市区町村の財政状況や行政の判断に依存する部分が大きく、新設が進みにくい構造になっています。

さらに、聴覚障害者自身がどの施設に入れるかという情報を得にくい状況もあります。手話通訳なしでは施設見学や申し込み手続きも難しく、情報アクセスの面でも課題が残っています。

注意点:聴覚障害者向け専門施設は全国的に空き待ちが多く、希望しても数ヶ月〜1年以上待機となるケースがあります。早めに情報収集と申し込みを始めることが重要です。

聴覚障害者が老人ホームを選ぶ際の重要ポイント

聴覚障害者が老人ホームを選ぶ際の重要ポイント

聴覚障害者向けの専門施設が少ない現状では、一般の老人ホームも含めて幅広く施設を探すことが現実的な選択です。ここでは、聴覚障害のある方が施設を選ぶ際に確認すべきポイントをお伝えします。

手話対応スタッフの有無を確認する

聴覚障害者向けの施設選びで最も重要なのが、手話対応のできるスタッフがいるかどうかです。専門施設でなくても、手話のできる介護職員を配置している一般の老人ホームや有料老人ホームは少数ながら存在します。

施設見学の際には、手話ができるスタッフが何人いるか、シフトに組み込まれているかを具体的に確認しましょう。「手話ができるスタッフが1人いる」という場合でも、夜間や休日には対応できないことがほとんどです。24時間のコミュニケーション体制が整っているかどうかが、生活の質に直結します。

手話対応が難しい施設でも、筆談ボードやタブレット端末を活用したコミュニケーション支援を実施しているところもあります。完全な手話環境でなくても、意思疎通の手段が複数用意されているかを確認することが大切です。

私ならこう判断します——手話対応スタッフが常時1名以上シフトに入っている施設であれば、一般施設でも検討の余地があります。しかし、「筆談のみ」という施設でコミュニケーションの主な手段が手話であるろうの方が入居した場合、孤立感が大きくなるリスクは高いと考えています。

光警報装置など聴覚補助設備のチェック

コミュニケーション以外にも、施設の設備面で確認すべき項目があります。特に重要なのは、聴覚に障害がある方が安全に生活するための設備です。

確認すべき主な設備を以下に挙げます。

  • 光警報装置:火災報知機や緊急呼び出しが光で知らせる装置。聴覚障害者専門施設では標準装備されているが、一般施設では未設置の場合も多い
  • ドアホン・振動式呼び出し装置:来訪者の通知や緊急時の呼び出しを振動や光で伝えるシステム
  • ベッドセンサー:夜間の離床を検知し、スタッフに通知する機能。聴覚に障害がある場合、夜間の安全確認が特に重要になる
  • 字幕対応テレビ:日常生活の質を保つための基本設備

田尻苑(福岡市西区)のような聴覚障害者専用施設では、こうした設備が一体的に整備されています。一方、一般の老人ホームではこれらの設備が整っていないケースが多く、施設見学時に設備リストを確認したうえで、未設置のものについては改善可能かどうかを施設側に相談してみることをおすすめします。

施設見学チェックリスト(聴覚障害者向け)

□ 光警報装置の設置状況
□ 手話対応スタッフの人数・シフト状況
□ 筆談・タブレットなどコミュニケーションツールの準備
□ 夜間の緊急対応体制
□ 他の入居者との交流支援の仕組み

一般施設でのコミュニケーション支援活用法

聴覚障害者向けの専門施設に入居できない場合でも、一般の老人ホームに入居しながら外部のコミュニケーション支援を活用する方法があります。

まず活用したいのが、手話通訳者の派遣制度です。医療機関の受診や行政手続きだけでなく、ケアプランの打ち合わせや施設内でのカンファレンスにも手話通訳者を派遣してもらえる場合があります。福岡市内であれば、福岡市聴覚障がい者情報センター(TEL:092-718-1724)に相談することで、手話通訳者の派遣手続きを進めることができます。

また、要約筆記者の活用も有効です。手話を使わない中途失聴者や難聴の高齢者には、話し言葉をその場でテキスト化して伝える要約筆記が適していることがあります。

さらに、施設のケアマネジャーや生活相談員に対して、聴覚障害に関する基本的な知識を共有しておくことも重要です。例えば、背後から急に声をかけない、表情を見せながら話すなど、日常的なコミュニケーション配慮を施設スタッフ全員に周知してもらうことで、生活の質が大きく変わります。

外部のサポートとして、福岡の介護施設への無料相談窓口を活用することも選択肢の一つです。施設の種類や特性を整理したうえで、聴覚障害への対応状況を確認してもらうことができます。

費用と入居条件の基本的な考え方

聴覚障害者向けの老人ホームを検討する際、費用や入居条件は施設の種類によって大きく異なります。ここでは主な施設タイプごとの費用感と条件を整理します。

聴覚障害者養護老人ホーム(措置施設)の費用

養護老人ホームは措置施設であるため、費用は前年の所得(公的年金など)から必要経費を差し引いた金額をもとに、費用負担基準表に当てはめて算定されます。低所得の方であれば月額数千円〜数万円程度の負担になるケースもあり、経済的に厳しい状況の方でも入居しやすい設計になっています。

ただし、措置入所の判断は市区町村(福祉事務所)が行います。希望しても必ずしも入居できるわけではなく、市区町村が「必要性あり」と認定することが入居の前提条件です。

一般の有料老人ホームの場合

一般の有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅に聴覚障害者が入居する場合、費用は通常の入居者と変わりません。介護付き有料老人ホームでは月額15万〜30万円程度が一般的な相場ですが、施設や立地によって大きく異なります。

一般施設の場合、聴覚障害に対する特別な費用補助制度は基本的にありませんが、障害者総合支援法に基づく補聴器の支給や日常生活用具の給付(ファックス・光警報装置など)を施設入居後も継続して活用できます。市区町村の福祉担当窓口に確認しておくとよいでしょう。

障害者総合支援法の日常生活用具給付制度では、聴覚障害者向けに「屋内信号装置(光警報装置)」「ファックス」「情報受信装置(字幕放送受信機など)」などの給付を受けられる場合があります。施設入居後も個人の補助として継続できるか、市区町村に確認することをおすすめします。

福岡の聴覚障害者向け施設と相談窓口

福岡県にお住まいの方にとって、最も重要な情報をまとめます。福岡には聴覚障害者向けの専門施設と、支援のための相談窓口が整っています。

田尻苑(聴覚言語障害者養護老人ホーム)

福岡市西区田尻にある「田尻苑」は、1992年4月に開設された九州初の聴覚・言語障害者専用養護老人ホームです。社会福祉法人福岡ろうあ福祉会が運営しており、定員は50名です。

施設では手話によるコミュニケーション環境が整備されており、光警報装置やドアホンなど聴覚補助設備も完備されています。入居できるのは65歳以上で聴覚・言語障害の身体障害者手帳を持ち、環境上・経済的理由から家庭生活に支援が必要と認められた方です(条件によっては65歳未満も可)。

入居の申し込みは、お住まいの市区町村の福祉事務所を通じて行います。自分で直接施設に申し込む仕組みではないため、まずは市区町村の福祉窓口に相談することが第一歩です。

福岡の相談窓口

施設探しや制度の相談には、以下の窓口を活用できます。

  • 福岡市聴覚障がい者情報センター(TEL:092-718-1724):手話通訳者の派遣、相談支援、各種情報提供を行っている。施設選びの相談にも対応
  • 福岡県聴覚障害者センター:県内の聴覚障害者向け福祉サービスに関する情報を提供
  • 市区町村の福祉事務所:養護老人ホームの措置入所の申し込み窓口。居住地の市区町村に相談
  • 地域包括支援センター:介護保険サービスに関する相談や要介護認定の申請サポートを担う

これらの窓口はいずれも無料で相談できます。「どこに相談すればいいかわからない」という状態であれば、まず地域包括支援センターか福岡市聴覚障がい者情報センターに連絡してみることをおすすめします。一つの窓口が、次に当たるべき窓口を案内してくれます。

また、聴覚障害者の介護に関する制度や支援内容については、(出典:健康長寿ネット「聴覚障害者の介護」)でも詳しく解説されています。公的機関の情報として参考にしてください。

施設探しでお悩みの方へ

「何から始めればいいか分からない」「費用が心配」「急いで施設を探している」など、介護に関するお悩みは一人で抱え込まないでください。

福岡介護ナビでは、福岡県内の老人ホーム・介護施設に関する情報をまとめています。まずは情報収集から始めてみてください。

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まとめ:聴覚障害者向け老人ホームの数と選び方のポイント

まとめ:聴覚障害者向け老人ホームの数と選び方のポイント

聴覚障害者向けの老人ホームは、全国でもわずか10施設前後しか存在せず、需要に対して供給が大幅に不足しているのが現状です。福岡県には「田尻苑」という九州唯一の聴覚言語障害者専用養護老人ホームがありますが、定員は50名と限られており、空き待ちが発生することもあります。

専門施設への入居が難しい場合は、手話対応スタッフの有無、光警報装置などの設備状況、外部のコミュニケーション支援サービスを活用できるかどうかを確認しながら、一般の老人ホームも選択肢に加えて探すことが現実的です。費用面では、養護老人ホームは措置制度による応能負担で比較的低コスト、一般施設は介護保険と実費の組み合わせになります。

施設探しの第一歩は、市区町村の福祉事務所や福岡市聴覚障がい者情報センターへの相談です。一人で抱え込まず、専門の相談窓口を活用しながら、本人が安心して暮らせる環境を一緒に探していきましょう。

※本記事の内容は、私自身の知見や一般的な情報提供を目的としており、特定の施設・サービスを推薦するものではありません。正確な情報は公式サイトや担当窓口にてご確認ください。最終的な判断は専門家や担当のケアマネジャーにご相談ください。

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