こんにちは。福岡介護ナビ、運営者のnishiです。
「老人ホームの近くに引っ越したら、深夜に救急車がうるさくて眠れない」「親が入居している施設から夜中に救急搬送の連絡が来ることが多い」——そんなお悩みを抱えていませんか。
老人ホームで救急車がうるさいと感じる方は少なくありません。施設の近くに住んでいる方なら近隣騒音の問題として、入居者の家族であれば「こんなに頻繁に病院へ運ばれて大丈夫なのか」という不安として、それぞれ違うかたちで向き合うことになります。
結論からお伝えすると、老人ホームで救急車が呼ばれる頻度が高いのは、施設の管理が粗雑だからでも、職員が無責任だからでもありません。高齢者の身体的な特性と、施設が担う医療的責任があいまって起きる、ある意味では避けられない現実です。ただし、その実態を正しく理解したうえで取れる対処法は確実に存在します。
この記事では、老人ホームで救急車が頻繁に来る構造的な理由から、近隣住民としての対策、施設を選ぶ立場から事前に確認できるポイントまで、私なりの視点でまとめています。
老人ホームで救急車がうるさいと感じる本当の理由

「最近また来てた」という声が老人ホームの近隣からよく聞かれます。実際、なぜこれほど頻繁に救急車が出入りするのでしょうか。その背景を整理してみます。
高齢者施設の救急搬送件数は年々増加している
消防庁の統計によると、救急搬送全体に占める高齢者の割合は年々上昇しており、令和6年中の搬送人員のうち高齢者は428万人超と、全体の約6割を占めています。その多くが老人ホームをはじめとする高齢者施設からの要請です。
老人ホームには要介護3〜5の重度の方が多く入居しており、持病を複数抱えているケースがほとんどです。血圧の急激な変動、誤嚥性肺炎、心不全の増悪、骨折など、日常的に起こり得る急変が、施設職員の判断で救急要請につながっています。
「それだけ入居者の状態が悪いなら、老人ホームに入れていいのか」と思う方もいるかもしれません。しかし現実には、在宅での介護が困難になった方が入居するのが老人ホームであり、急変のリスクがある方を安全に支えるための環境が整っているからこそ入居が認められる仕組みです。
入居者一人ひとりの状態が重くなるにつれ、施設全体として救急搬送の件数が増えるのは、施設が正しく機能しているサインでもあります。救急車の出動が多い施設が「危ない施設」かというと、必ずしもそうではありません。重篤な状態の入居者を無理に施設内で抱え込んで病院に連れて行かない施設のほうが、入居者の安全を軽視しているとも言えます。
この点は、老人ホームを選ぶ立場でも、近隣に住む立場でも、理解しておいてほしいことのひとつです。救急車の頻度だけで施設を判断するのは、現場の実態を見誤るリスクがあります。
夜間に救急車が来やすい理由
特に「夜中の救急車がうるさい」という声は多く、老人ホームの周辺住民から寄せられる苦情でも上位に挙がります。なぜ夜間に搬送が集中しやすいのでしょうか。
高齢者は日中よりも夜間に体調が急変しやすい傾向があります。就寝中の低体温、血圧の夜間変動、脱水、夜間の転倒——これらはいずれも夜に起きやすいトラブルです。施設内に看護師が常駐していない夜間帯は、介護職員が状態を確認して救急要請の判断を行いますが、安全を優先すればするほど搬送件数は増えます。
また、昼間であれば主治医や協力病院に電話で指示を仰ぐことが比較的容易ですが、夜間は医師との連絡が難しく、「電話がつながらないから救急車を呼ぶしかない」という状況も現場では起こっています。ある施設の職員から直接聞いた話ですが、夜中に入居者の呼吸が乱れているのを発見したとき、オンコールの医師に何度電話しても出なかったため、やむなく119番したケースがあったそうです。
施設によっては、夜間対応の協力医療機関と事前の取り決めを結んでいるケースもあり、それがある施設では夜間の救急搬送頻度が下がる傾向があります。施設の医療体制の充実度が、夜間の救急出動件数に直結しているわけです。
近隣に老人ホームがあって夜中のサイレン音に悩んでいる方は、この夜間搬送の構造を知っておくと、多少なりとも気持ちが整理できるかもしれません。「入居者の命がかかっている出動である」という事実は、騒音への対処を考える前提として重要です。
施設の種類によって搬送頻度が異なる
老人ホームといっても、特別養護老人ホーム(特養)、介護付き有料老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームなど、施設の種類によって入居者の状態や医療体制は大きく異なります。当然、救急搬送の頻度にも差が出ます。
特養は要介護3以上が入居条件で、看取りを行う施設も多くあります。医療依存度が高い方が多いため、救急搬送の件数も多くなる傾向があります。一方、サ高住や住宅型有料老人ホームは比較的自立度の高い方も入居しており、施設の医療連携の整備状況によって搬送頻度に大きなばらつきがあります。
三重県が令和5年に実施した高齢者施設等における救急搬送等実態調査によると、特別養護老人ホームでは調査対象施設の約3割が「救急搬送の判断が困難だった事例がある」と回答しており、現場での判断の難しさが浮き彫りになっています。施設の現場では「呼ぶべきか様子を見るべきか」の判断が、毎晩のように繰り返されています。
「近くに建つ老人ホームはどのタイプか」「どのくらいの規模か」を把握しておくだけでも、将来的な救急車の出動頻度の見当がつきます。大規模な特養であれば、週に数回の搬送が発生することもあり得ます。これは知識として持っておいて損はないでしょう。
逆に言えば、グループホームや小規模なサ高住など、比較的自立度の高い入居者を対象とした施設を選べば、救急車の出動頻度は特養と比べて少なくなる傾向があります。近隣の施設がどのタイプかを知るだけで、不安が軽減されることもあります。
救急搬送は入居者の安全を守るための対応
老人ホームが救急車を呼ぶのは、入居者の生命と安全を守るためです。施設職員には「迷ったら呼ぶ」という原則があり、東京消防庁も高齢者施設向けに「急変時には適切に救急要請すること」を強く推奨しています。
施設側が救急搬送をためらった結果、入居者が重篤化した場合の責任問題は深刻です。そのため、現場の介護職員・看護職員は安全側に傾いた判断をせざるを得ない側面があります。「また呼んだのか」と思われるリスクより、「なぜ呼ばなかったのか」と問われるリスクのほうが、職員にとっては遥かに重大です。
この構造を理解すると、老人ホームの救急車がうるさいという問題は「施設が改善すべき問題」ではなく、「高齢化社会全体の課題」として捉え直せます。近隣の方が騒音に悩む気持ちはよく分かりながらも、施設側の事情も同時に理解していただけると、双方にとって少し楽になると私は感じています。
消防庁の「令和6年版 救急・救助の現況」によると、令和6年中の救急出動件数は約780万件、搬送人員は約710万人に達しており、高齢者が全体の約60%を占めています。(出典:消防庁「令和6年版 救急・救助の現況」)
老人ホームの救急車がうるさいときの対処と施設の選び方

理由は分かったとしても、実際に困っているのであれば対処が必要です。近隣住民としての立場と、施設を選ぶ家族の立場、それぞれに合った行動をまとめます。
近隣住民が取れる騒音対策
老人ホームの近くに住んでいて救急車のサイレン音に悩んでいる場合、まず知っておきたいのは「施設側にサイレン音を小さくする権限はない」という事実です。
道路交通法および道路交通法施行令により、緊急自動車はサイレンを鳴らし赤色灯を点灯させて走行することが義務付けられています。音量の基準も法令で定められており、施設の要請を受けて駆けつける救急車がサイレンを消すことは法律上認められていません。施設へ苦情を入れても、対応できる手段が施設側にはないのです。
ただし、近年は一部の自治体で「低音モード対応の救急車」の導入が始まっています。山口県下関市の消防局は2023年10月、法定範囲内でサイレン音を低音化できる救急車を導入し、注目を集めました。こうした取り組みが全国に広がれば、将来的に騒音は緩和される可能性があります。
現実的な対策としては、以下のような方法が考えられます。
防音対策(寝室・窓周り)
サイレン音が入ってきやすいのは窓からです。防音カーテンや二重窓(内窓)の設置が最も効果的です。賃貸の場合でも、防音カーテンは取り付けやすく、数千円〜2万円程度で購入できるものが多くあります。二重窓は工事が必要ですが、内窓タイプであれば賃貸でも大家の許可を得ればリーズナブルに設置できるケースがあります。寝室の窓を重点的に対策するだけでも、夜中の不意なサイレン音による目覚めを減らせます。
耳栓・ノイズキャンセリングの活用
夜間の不意なサイレン音への対策として、耳栓やノイズキャンセリングイヤーホンを就寝時に活用する方法もあります。完全に音を遮断することはできませんが、サイレン音による不快感や目覚めを和らげる効果はあります。最近では睡眠専用の耳栓や、就寝時向けの小型イヤーホンも多く販売されています。
認識の転換:騒音から命の音へ
物理的な対策と並行して、「あの音は誰かの命を救おうとしているサインだ」という認識の転換も大切です。聴覚的な刺激に対するストレス反応は、その音への意味付けによって変わる部分があります。「うるさい騒音」ではなく「緊急の命の音」として認識を変えることで、同じ音でも感じ方が変わることがあります。これは我慢しろという話ではなく、心理的なストレスの軽減策として試してみる価値があります。
施設見学で確認すべき医療連携体制
これから老人ホームへの入居を検討している家族にとって、救急搬送の頻度は「施設の質」を測るひとつの視点になります。施設見学の際に確認しておきたいポイントを整理します。
まず確認したいのは「協力医療機関との連携体制」です。施設内に常勤または非常勤の医師が配置されているか、協力病院はどこか、夜間の緊急時にどこに連絡するかを具体的に聞いてみてください。夜間の医師との連絡体制が整っている施設は、軽微な体調変化を電話で相談して経過観察できるため、救急搬送の件数を適切にコントロールできる可能性があります。
次に「看護師の配置・夜間対応」を確認します。夜間に看護師が常駐しているか、オンコール(呼び出し)対応のみかで、搬送判断のスピードと精度が変わります。看護師がいれば、介護職員だけの場合と比べてより適切な判断がしやすくなります。夜間常駐の看護師がいる施設は費用が高くなる傾向がありますが、それだけ手厚いケアを受けられるということでもあります。
また、「看取り対応の有無」も重要な確認項目です。看取りを施設内で行う方針の施設は、末期状態にあっても「住み慣れた環境で穏やかに過ごす」ことを優先するため、救急搬送の件数が抑えられる傾向があります。逆に看取り対応がない施設は、状態が悪化するたびに搬送を行うため、頻度が高くなりがちです。
施設見学時の確認チェックリスト
① 協力医療機関はどこか、夜間の緊急時の連絡先はどこか
② 夜間に看護師は常駐しているか(オンコール対応のみか)
③ 看取り対応を行っているか
④ 入居者の急変時に家族への連絡をどのタイミングで行うか
⑤ 緊急時の対応マニュアルを見せてもらえるか
救急搬送の頻度で施設の良し悪しは判断できない
施設見学をしているとき、「ここは救急搬送が多いから悪い施設だ」と判断したくなることがあります。しかし私は、この判断基準は危険だと考えています。
救急搬送が多い施設が必ずしも悪い施設ではなく、重度の方を受け入れている施設や、安全を優先して早めに病院へ送る方針の施設ほど、件数が多くなる傾向があります。一方で、搬送件数が少ない施設が「安全で良い施設」かというと、必要な搬送を怠っている可能性もゼロではありません。
私ならこう判断します——「救急搬送の件数」よりも「搬送の判断プロセス」を聞くほうが施設の質が分かります。「どんな状態になったときに搬送するか、どんな基準で判断しているか」を施設スタッフに聞いたとき、明確に答えられる施設は信頼できます。曖昧な答えしか返ってこない施設は、判断基準が属人的になっている可能性があります。
入居前に「緊急時の対応マニュアルを見せてもらえますか」と聞いてみるのもひとつの方法です。マニュアルが整備されており、スタッフがその内容を把握している施設は、緊急対応に対して組織的に取り組んでいる証拠です。マニュアルの有無だけでなく、スタッフが内容を自分の言葉で説明できるかどうかも、施設の質を見極める重要な指標になります。
また、入居前の契約時に「緊急時・救急搬送時の家族への連絡方法」を明確に取り決めておくことも大切です。「どんな状態になったら連絡するか」「深夜でも連絡するか」「まず施設で対応してから事後報告でよいか」といった内容を、事前に施設と家族の間で合意しておくと、いざというときの混乱を防げます。
介護施設と地域の関係:相互理解の大切さ
老人ホームと近隣住民の関係は、決して対立的である必要はありません。しかし実際には、「老人ホームが建つと救急車がうるさくなる」という理由から、建設反対運動が起きるケースも全国で見られます。
みんなの介護コミュニティへの投稿でも、「近くに老人ホームが建設されると聞いたが不安」という声が複数見られます。静かな住宅街に突然介護施設ができることへの戸惑いは、感情として十分に理解できます。
ただ、高齢化が進む日本では、老人ホームは地域に必要不可欠なインフラです。救急車の出動が増えることは、地域の高齢者が安全に支えられているサインでもあります。施設側も、近隣への説明会を開く、苦情窓口を設けるといった形で地域との関係づくりに努めることが大切ですし、実際にそうした取り組みを行っている施設も増えています。
もし近隣の老人ホームへの苦情や相談がある場合、まずは施設の管理者に直接連絡することをおすすめします。施設側が対応できる問題(送迎車のアイドリング音、夜間の建物周辺の照明など)であれば、改善を求めることは正当な権利です。一方、救急車のサイレン音については、施設が音量を変えることはできないため、そこへの苦情は市区町村や消防局への問い合わせが適切なルートになります。
サイレン音の法律的な位置づけを理解する
「あの音、違法じゃないの?」と思う方もいるかもしれませんが、救急車のサイレン音は法律で義務付けられたものです。
道路交通法第41条では、緊急自動車の優先通行を確保するため、サイレンの吹鳴と赤色灯の点灯が義務付けられています。また、緊急自動車の基準に関する内閣府令において、サイレン音の音量についても最低基準が定められており、一定以上の音量を出さなければ法律違反になる構造です。つまり、「大きな音を出すな」ではなく「大きな音を出さなければならない」という法的義務が課されています。
このことを知ると、「うるさい」という感情が向かう先が、施設でも救急車でもなく、法制度そのものになります。近年、国や自治体レベルで夜間の救急搬送時の低音サイレン化を推進する動きが出てきており、この問題は社会全体で解決を模索している段階にあります。
個人でできることには限界がありますが、「問題の本質がどこにあるか」を理解することで、無用なストレスを避けることができます。老人ホームへの苦情として向けるのではなく、制度改善の問題として捉えることが、精神的にも建設的な向き合い方です。
注意:施設へのクレームが逆効果になることも
救急車のサイレン音について老人ホームへ苦情を入れても、施設側には対応できる手段がありません。「サイレンを鳴らさないで来てほしい」という要求は法律上不可能です。施設スタッフがその対応に追われることで、本来の入居者ケアに影響が出る可能性もあります。苦情を入れる場合は、施設が対応できる問題かどうかを事前に確認することが大切です。
施設探しでお悩みの方へ
「何から始めればいいか分からない」「費用が心配」「急いで施設を探している」など、介護に関するお悩みは一人で抱え込まないでください。
福岡介護ナビでは、福岡県内の老人ホーム・介護施設に関する情報をまとめています。まずは情報収集から始めてみてください。
まとめ:老人ホームの救急車がうるさい問題を正しく理解するために

老人ホームの救急車がうるさいと感じる状況には、近隣住民としての立場と、入居者家族としての立場の2つがあります。いずれの立場にあっても、まず知っておきたいのは「その出動は誰かの命と直結している」という事実です。
救急搬送の頻度が高いことは、施設が安全を優先している証拠でもあります。サイレン音は法律で義務付けられており、施設側が音を小さくすることはできません。近隣住民としての対策は、防音対策と状況への理解が両輪になります。
施設を選ぶ立場であれば、救急搬送の件数よりも「搬送の判断基準」「医療連携体制」「夜間対応の仕組み」を確認することが、施設の質を見極めるうえで本質的なアプローチです。
老人ホームへの入居を検討されている方は、一人暮らしの親を施設に入れる時期と手順についての記事もあわせてご覧ください。入居のタイミングや手続きの流れを詳しく解説しています。
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