介護施設で働く職員の方から、「どんな上履きを選べばよいか」「クロックスは使えるか」「入浴介助のときの靴はどうすればいいか」といった質問をよくいただきます。毎日8時間以上履き続ける上履きですから、適切な選び方は職員の体調管理にも、利用者の安全にも直結する重要なテーマです。
介護施設の職員向けの上履きは、一般的なオフィス用シューズとは求められる機能が大きく異なります。転倒防止のための滑り止め、長時間の立ち仕事に耐える軽量性とクッション性、緊急時にすぐ動ける脱ぎ履きのしやすさ、衛生管理のための洗いやすさ——これらを総合的に満たす必要があります。
この記事では、介護施設の職員向け上履きの種類・選び方の基準・施設ごとに異なる規定まで、私自身の知見と調査をもとに詳しく解説します。
介護施設の職員が選ぶ上履きの条件

介護現場での上履き選びで失敗する原因の多くは、「歩きやすければよい」「安ければよい」という基準で選んでしまうことです。実際の介護の現場では、職員自身の安全を守るだけでなく、利用者を介助する際の安定性、夜勤での静音性など、多様な条件を満たす必要があります。このセクションでは、介護施設の職員が上履きに求めるべき5つの条件を解説します。
転倒防止に欠かせない滑り止め性能
介護施設の床は、一般的な住宅に比べて滑りやすい環境が多くあります。廊下はワックスがけが定期的に行われ、浴室・洗面所・食堂では水や食べ物がこぼれることも日常的です。職員が転倒した場合、自分が怪我をするだけでなく、支えている利用者が巻き込まれて重大な事故につながるリスクがあります。
そのため、介護施設の職員の上履きには、ソール(底面)の滑り止め性能が最優先事項の一つです。靴底のグリップパターンが細かく刻まれているもの、天然ゴムや特殊ゴム素材を使ったソールは、濡れた床でも一定のグリップ力を発揮します。
確認のポイントとしては、「ノンスリップ」「滑り止め加工」「グリップソール」などの記載があるかどうかを見てください。ただし、表示があっても実際のグリップ力は製品によって差があります。可能であれば実際に試し履きして、床を歩いたときの安定感を確かめることをおすすめします。
また、靴底の素材だけでなく、ソールのパターン形状も重要です。凹凸が細かく規則的に並んだパターンは排水性が高く、水場でも滑りにくい特性を持ちます。ウォーターグリップ対応と明記された製品は、通常の滑り止め以上の性能を期待できます。
なお、厚生労働省が公表している「介護保険施設等における事故予防及び事故発生時の対応に関するガイドライン」では、施設内の転倒事故防止が重点事項として取り上げられており、職員の靴選びもその安全管理の一環として意識しておく必要があります。(出典:厚生労働省老健局)
滑り止め性能を確認するポイント:①ソールのゴム素材の質感 ②グリップパターン(細かい凹凸) ③「ノンスリップ」の表記 ④実際に履いて歩いたときの安定感
長時間立ち仕事向きの軽さとクッション
介護職は1日の業務中に非常に多くの移動と立ち仕事が発生します。食事介助・入浴介助・排泄介助・リハビリの付き添いとエリア間を何度も往復しながら業務を行うため、1日1万歩以上歩くことも珍しくありません。そのような環境において、上履きの重量とクッション性は職員の疲労度に直接影響します。
重い靴は足首や膝への負担を増やし、長時間着用すると体全体の疲労感につながります。軽量素材としてはEVA(エチレン酢酸ビニール)フォームが多くの介護用シューズに採用されており、軽さとクッション性を両立しています。片足の重量が250g以下を目安にすると、長時間着用での疲れ方が変わりやすいです。
クッション性については、かかと部分のクッションが特に重要です。歩行時の衝撃を吸収することで、膝や腰への負担を軽減します。また、インソール(中敷き)を別途購入して入れることで、既存の靴のクッション性を補う方法もあります。市販の「疲れにくいインソール」は1,000〜3,000円程度で購入でき、コストパフォーマンスの高い疲労対策として活用されています。
さらに、靴のサイズ選びも疲労に影響します。サイズが合っていない靴は足への負担が増し、靴ずれや筋肉の無駄な緊張を引き起こします。実際に靴を購入する際は、夕方など足がむくんだ状態で試し履きするのが、日中の業務中のフィット感に近い状態で確認できるためおすすめです。
インソールの活用:靴のクッション性が物足りない場合は、市販の低反発インソールやアーチサポートインソールを加えることで、足裏の疲れを大きく軽減できます。インソールが取り外せるタイプの靴を選ぶと、洗いやすさの面でも有利です。
脱ぎ履きしやすさが安全に直結する理由
介護現場では、利用者の突発的な状況変化に素早く対応しなければならない場面が頻繁にあります。ベッドからの転落、急な体調変化、転倒しそうな瞬間に駆け寄るといった場面では、靴が素早く確実に履けることが安全に直結します。
特に注意が必要なのが靴紐のある靴です。靴紐は業務中にほどける可能性があり、ほどけたまま歩くと職員自身が転倒するリスクがあります。また、介助中に利用者が靴紐を踏んでしまい、バランスを崩す事故も報告されています。多くの介護施設では靴紐のある靴を禁止としているか、推奨していないケースが多いです。
おすすめはマジックテープ式(ベルクロ)のシューズです。素早く脱ぎ履きでき、フィット感も調整しやすく、履いている間はしっかり固定されます。もう一つの選択肢はスリッポン式ですが、かかとが固定されないデザインのものは避けてください。緊急時に脱げてしまうリスクがあります。
また、夜勤の際は素早く靴を履いて対応できる体制が求められます。ナースコールに素早く対応するためにも、半覚醒の状態でも確実に履けるデザインであることが重要です。マジックテープ式の靴は、このような場面での実用面でも優れています。
一方で、脱ぎ履きのしやすさを重視しすぎてかかとが固定されない靴を選ぶことは別の危険を生みます。脱ぎ履きのしやすさと、履いているときのフィット感・固定感を両立できるマジックテープ式が、介護職員の上履きとして最もバランスが取れた選択といえます。
かかとのない靴が禁止になる理由
スリッパや、かかとが固定されていないサンダルタイプの靴は、多くの介護施設で禁止されているか使用が制限されています。その理由は安全性と業務効率の両面にあります。
まず安全性の観点から見ると、かかとのない靴は歩行中に足が固定されないため、走ったり急に方向転換したりする際に脱げやすくなります。利用者を抱えて移動する場面や、転倒しそうな利用者を支える場面では、足がしっかり固定されていることが不可欠です。かかとが浮いている状態では踏ん張る力が出ず、利用者を十分に支えられない可能性があります。
次に、静音性の問題があります。かかとのない靴は歩くたびに「パタパタ」という音が出やすく、特に夜勤の時間帯に利用者の睡眠を妨げるリスクがあります。介護施設では利用者が安心して眠れる環境づくりが重要であり、職員の足音は意外と気になるものです。
また、かかとがない靴では万が一の際に走ることが難しくなります。急変した利用者のもとへ急行する場面、別室で起きた転倒に対応する場面など、介護の現場では即座の移動が求められることがあります。そのような緊急場面でかかとのない靴では対応が遅れるリスクがあります。
クロックスについては、かかとベルト付きのスポーツモード(かかとで固定する状態)であれば施設によってはOKとしているケースがあります。ただし、かかとベルトを下げてサンダル状態で履くことは上記の理由から禁止となる施設がほとんどです。
スリッパや「かかとなし」の靴は転倒・脱げのリスクがあり、大半の施設で禁止。クロックスはかかとベルトを必ずスポーツモードで使用することが最低条件です。
衛生面を重視した素材と洗いやすさ
介護施設は感染症対策が非常に重要な環境です。食事介助中の食べこぼし、排泄介助中の汚染、入浴介助での水濡れなど、靴が汚れる場面は少なくありません。そのため、洗いやすい素材であることは介護施設での上履き選びにおいて外せない条件の一つです。
布製・メッシュ素材の靴は通気性が高い反面、汚れが染み込みやすく、洗濯機で洗う際に型崩れしやすいデメリットがあります。一方、合成皮革(PUレザー)や樹脂素材(EVA・クロックス素材)は拭き取りやすく、水洗いも簡単です。介護の現場では汚れが多いため、清掃のしやすさを優先して素材を選ぶことが大切です。
また、抗菌・防臭加工が施された靴も多く出回っています。1日中履き続けることで蒸れやすい介護職の環境では、防臭加工は快適性にも関わります。インソール(中敷き)が取り外して洗えるタイプは、さらに衛生的な管理ができるためおすすめです。
介護施設における衛生管理の考え方は、リネン類の管理と共通する部分が多くあります。施設全体の衛生管理の取り組み方については、介護施設のリネン交換を徹底解説|頻度・費用・衛生管理までも参考にしてみてください。
介護施設の職員向け上履きの種類と選び方

介護施設の職員が実際に選んでいる上履きには、大きく「ナースシューズ」「クロックス(入浴介助用)」「スニーカータイプ」の3系統があります。それぞれに特徴があり、施設の方針や担当する業務内容によって使い分けることが重要です。このセクションでは種類別の特徴と、選び方の具体的な基準を解説します。
ナースシューズが介護現場で人気な理由
介護施設の職員の中で最も多く選ばれている上履きがナースシューズです。看護師向けに設計されたシューズですが、介護職員にも広く使われている理由は、その機能性と価格のバランスにあります。
①価格が手頃:ナースシューズは2,000円前後から購入できるものが多く、消耗品として割り切って選びやすい価格帯です。介護の現場では靴が汚れやすいため、比較的安価でこまめに買い替えられる価格は大きなメリットです。
②軽量設計:ナースシューズは長時間の立ち仕事を前提とした設計のため、軽量なモデルが多く、疲れにくさを重視した作りになっています。EVA素材のソールを採用した製品は特に軽量で、1日中履いていても足への負担が少ないと評判です。
③脱ぎ履きしやすい設計:マジックテープ式やスリッポン式のものが多く、靴紐のタイプは少ないため、介護現場での安全基準を満たしやすいです。かかともしっかり固定されるデザインが主流で、業務中の安定感も確保されています。
④滑り止め加工:医療・介護現場での使用を想定したナースシューズは、ソールに滑り止め加工が施されているモデルが多く、安全性への配慮がなされています。
ただし、ナースシューズも種類によって品質の幅があります。安価なものはクッション性が低く、長時間の着用で足が疲れやすいことも。選ぶ際は実際に試し履きするか、口コミ・レビューでクッション性の評価を確認することをおすすめします。代表的な製品として、ムーンスターの「MS大人の上履き」はマジックテープ式でメッシュ素材の通気性が高く、介護・医療現場での人気が高いモデルです。
クロックスは介護施設でOKかどうか
「クロックスを職場で履いてもいいか?」という疑問は、介護職に就く方から非常によく寄せられます。結論としては、施設の方針によって異なるというのが正確な回答です。ただし現場の傾向として、「入浴介助専用としてはOK、通常勤務時はNG」という運用が多く見られます。
クロックスが歓迎される点は、靴紐がなく脱ぎ履きしやすいこと、水に濡れても素材がダメージを受けにくいこと、汚れても洗いやすいこと、通気性がある(メッシュタイプの場合)ことです。特に入浴介助では、水場に強い素材という点でクロックスが重宝されます。
一方、クロックスが禁止される理由には以下が挙げられます。かかとベルトを下げたサンダル状態では足が固定されず転倒・脱げのリスクがあること、歩く際の音が大きくなりやすいこと(硬い床でパタパタ音が出る)、施設としての見た目・印象への配慮(カジュアルすぎる見た目を禁止する施設がある)、先端部分に穴が開いているタイプは落下物が当たった際に足を保護しにくいことなどです。
もしクロックスを使いたい場合は、かかとベルトを必ずスポーツモード(かかと側で固定)にして使用することが最低条件です。また、入職前や靴の変更を検討する際は、施設の規定を必ず事前に確認してください。クロックスを禁止している施設でこっそり履き続けることは、指導の対象になるだけでなく安全管理上の問題にもつながります。
入浴介助に適したウォーターシューズ
入浴介助は介護業務の中でも特殊な環境での作業です。浴室内は常に濡れており、石鹸・シャンプーで床が滑りやすくなっています。通常の上履きでは転倒のリスクが高いため、入浴介助専用のシューズを用意している施設が多くあります。
①水に強い素材:EVA樹脂やゴム系素材など、水に濡れても形状が変わらず劣化しにくい素材が求められます。布製や合成皮革の靴は水場での使用に適しません。濡れたまま長時間使用すると素材が劣化し、滑り止め性能も低下します。
②浴室床向けのグリップ力:通常の床よりも滑りやすい浴室床に対応した強力な滑り止めが必要です。「ウォーターグリップ」「バスルーム対応」などの記載があるものを選ぶとよいでしょう。入浴介助専用シューズとして販売されている製品は、浴室での使用を前提とした設計になっています。
③速乾性:入浴介助の後、次の業務でも使用できるよう、短時間で乾く素材が理想です。クロックス系の樹脂素材は速乾性が高く、入浴介助後のシューズとして適している理由の一つです。布製のウォーターシューズは乾燥に時間がかかるため、介護現場での実用性が下がります。
④衛生管理しやすい構造:浴室内では水虫の感染リスクもゼロではありません。インソールなし、または取り外して洗えるインソールを持つ靴を選ぶことで、衛生面での管理がしやすくなります。施設によっては入浴介助用の靴を支給しているケースもあるため、入職前に確認しておくとよいでしょう。
自分で用意する場合は、クロックスのスポーツモード(かかとベルト固定)や、マリンシューズタイプの水場専用シューズが選択肢に入ります。2,000〜4,000円程度の価格帯でも十分な品質の製品が揃っています。
施設の規定と上履き支給の実態
介護施設によって、上履きに関する規定は大きく異なります。統一のシューズを施設から支給するところもあれば、色や素材の指定だけして自己購入とするところ、完全に職員の自由に任せているところまで様々です。
①施設からの支給:特定のブランド・モデルの上履きを施設が購入して職員に支給するケース。白色のナースシューズを指定する施設が多いです。費用は施設負担となるため職員は自己購入不要ですが、自分の好みや足の形に合うものを選べないデメリットがあります。
②規定内での自己購入:色(白・黒・グレーなど)や靴の種類(スニーカー禁止・スリッパ禁止など)の制限はあるが、具体的なブランドは指定されないケース。職員が自分の足に合うものを選べる自由度があります。費用は自己負担となりますが、靴選びの裁量があるため長期的には足の疲れにくさにつながります。
③自由選択:安全に関わる最低条件(靴紐なし・かかとあり・滑り止めあり)だけを定め、具体的な選択は職員に委ねるケース。新しい職員が入った際に口頭で説明される場合も多いです。
私がおすすめするのは、就職前の見学・面接時に上履きの規定について確認することです。入職後に「その靴はNG」と言われてから買い直すのは費用も手間も無駄になります。面接時に「上履きの規定や支給の有無を教えていただけますか?」と確認することは配慮を示す質問として好印象にもつながります。施設の管理者側から見た規定設定の課題については、介護施設管理者の悩みと解決策も参考になります。
複数所持と洗い替えで清潔を保つコツ
介護施設の職員は業務中に靴が汚れることが多いため、上履きの衛生管理が重要です。私が調べた現場職員の実例では、多くの方が2足以上の上履きを持ち、交互に使用しながら毎日または2日に1回洗っています。
複数所持のすすめ:1足だけで使い続けると、洗って乾かす時間がなく翌日も汚れた状態で履くことになります。最低でも2足用意して、1足を洗っている間にもう1足を使うローテーション方式が衛生的です。介護施設という感染症対策が重要な職場環境においては、清潔な靴を毎日履くことは職業倫理の観点からも大切です。
素材別の洗い方:合成皮革・樹脂素材は濡れた布で拭くだけで汚れが落ちやすく、必要に応じて水洗いできます。メッシュ素材は洗濯ネットに入れて洗濯機洗いができるものが多いですが、型崩れに注意が必要です。手洗いの場合は中性洗剤を使い、すすぎ後は形を整えて陰干しします。クロックス系の樹脂素材は水洗いが最も簡単で、洗剤と水でさっと洗えば清潔を保てます。
交換の目安:靴底のすり減り、クッションのへたり、ソールのグリップ力の低下が見られたら交換のサインです。一般的には毎日着用で3〜6ヶ月ごとに交換するのが目安とされています。滑り止めが劣化した靴を使い続けることは転倒リスクを高めるため、早めの交換を心がけてください。
上履きの衛生管理まとめ:①2足以上用意してローテーション ②素材に合った洗い方を選ぶ ③乾燥機は避けて陰干しが基本 ④3〜6ヶ月で交換が目安
まとめ:介護施設の職員に合う上履き選び

介護施設で働く職員の上履きには、「転倒防止のための滑り止め」「長時間の立ち仕事を支える軽量性とクッション」「緊急時の脱ぎ履きのしやすさ」「衛生管理のための洗いやすさ」という4つの基本条件が求められます。
種類別に見ると、介護現場の王道はナースシューズです。2,000円前後から購入でき、軽量で滑り止め付き、脱ぎ履きしやすい設計が介護の現場のニーズに合っています。入浴介助には、通常の上履きとは別に水場向けのウォーターシューズを用意することが理想的です。
クロックスについては施設の方針を必ず確認してください。かかとベルトをスポーツモードにすれば使用できる施設もありますが、かかとが固定されない状態での使用は安全上避けてください。いずれの靴も、衛生管理のために複数所持と定期的な洗い替えを習慣にしてください。
施設探しでお悩みの方へ
「何から始めればいいか分からない」「費用が心配」「急いで施設を探している」など、介護に関するお悩みは一人で抱え込まないでください。
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※本記事の内容は、私自身の知見や一般的な情報提供を目的としており、特定の施設・サービスを推薦するものではありません。介護施設の上履きに関する規定はお勤めの施設によって異なります。正確な情報は公式サイトや担当窓口にてご確認ください。最終的な判断は専門家や担当のケアマネジャーにご相談ください。