介護施設の領収書、ちゃんと保管していますか?「なんとなく取っておいたけど、いつまで保管すればいいの?」「確定申告が終わったら捨てていいの?」という疑問を持つ方が多いのが現実です。
実は、介護施設の領収書の保管期間は目的によって異なります。医療費控除を受けるための保管期間、万が一の税務調査への備え、そして亡くなった親の相続手続きで必要になるケースなど、知らないと後悔する落とし穴がいくつかあります。
この記事では、介護施設の領収書の保管期間について、利用者家族の視点から詳しく解説します。「5年保管すればいい」という結論だけでなく、なぜ5年なのか、どんな場合は7年必要なのか、紙の領収書をデジタル化できるのかまで、実際に役立つ情報をお伝えします。
介護施設の領収書を保管する期間の基本ルール

介護施設の領収書を「いつまで保管すべきか」は、何のために使うかによって変わります。ここでは利用者家族が押さえておくべき基本的な保管期間のルールを整理します。
医療費控除に必要な保管年数の基本
介護施設の費用の一部は、確定申告で医療費控除を申請することができます。そして、その医療費控除の申請に使った領収書には、国税庁が定めた保管義務があります。
国税庁の規定によると、医療費の領収書は確定申告の提出期限から5年間、自宅等で保管する必要があります。これは、申告後に税務署から内容の確認を求められた場合に提出・提示できるようにしておくためです。
たとえば、2025年分の介護費用について2026年3月15日に確定申告を行った場合、その申告期限の翌日である2026年3月16日から5年後、すなわち2031年3月16日まで保管が必要ということになります。
5年間保管が必要な理由
平成29年分の確定申告から、医療費控除の申請には領収書の添付が不要になり、「医療費控除の明細書」を作成して提出する方式に変わりました。ただし、税務署がその明細書の内容を確認するために、申告期限から5年間は領収書の提示・提出を求めることができると定められています。つまり「提出は不要だが、手元に保管は必要」という状態です。
なお、健康保険組合などが発行する「医療費通知」を活用して申告した場合は、その通知書の記載内容の確認は不要となるため、領収書の保管義務が緩和されることがあります。しかし、介護施設の費用については通常この医療費通知が発行されないため、実務上は原則5年間の保管を前提に考えてください。
確定申告後も税務署に提出を求められる場合
「確定申告が終わったから領収書はもう捨てても大丈夫」と思っている方は注意してください。申告後5年以内であれば、税務署から領収書の提示・提出を求められることがあります。
税務調査の対象となるケースは多くはありませんが、以下のような状況では連絡が来ることがあります。
- 申告した医療費の金額が例年と大きく異なる場合
- 高額な介護施設費用をまとめて申告した場合
- 複数年分の医療費を遡って還付申告した場合
このとき領収書を捨ててしまっていると、控除が否認されて追加で税金を支払わなければならない事態になりかねません。私は利用者家族の方に「確定申告が終わったあとも、最低5年は絶対に保管してください」とお伝えしています。
遡って申告した場合は保管期間の起算点に注意
過去5年分の医療費を遡って還付申告することが可能です。その場合、申告した各年の申告書提出日から5年間、それぞれの領収書を保管する必要があります。「2021年分を2026年に申告した」場合、2026年の申告日から5年後の2031年まで保管が必要です。遡り申告をした分だけ、保管すべき領収書の年数と量が増えることを覚えておいてください。
介護保険自己負担分の領収書が対象になる費用
介護施設の費用のうち、医療費控除の対象になるものと対象にならないものがあります。領収書を保管するうえでも、どの費用が対象かを把握しておくことが大切です。
医療費控除の対象となる主な費用は以下のとおりです。
| 費用の種類 | 医療費控除の対象 |
|---|---|
| 介護老人保健施設(老健)の利用料 | 対象(全額) |
| 介護老人福祉施設(特養)の利用料 | 対象(1/2相当額) |
| 指定介護療養型医療施設の利用料 | 対象(全額) |
| 認知症対応型グループホームの利用料 | 対象外 |
| 住宅型有料老人ホームの施設利用料 | 対象外 |
| 特定施設(介護付き有料老人ホーム)の利用料 | 対象外 |
| 訪問介護・デイサービスの自己負担分(医療系) | 対象(一部) |
| 食費・居住費(ホテルコスト) | 原則対象外 |
特養の場合は施設サービス費の1/2に相当する金額のみが対象になる点は特に注意が必要です。また、住宅型有料老人ホームやグループホームの施設利用料そのものは原則として対象外ですが、そこで受ける訪問介護などの医療系サービスの費用は別途控除対象になることがあります。
いずれにしても、すべての領収書を保管しておき、申告時に専門家に確認するというのが確実な方法です。最初から「この費用は対象外だから」と判断して捨ててしまうのはリスクが高いです。
施設種別による控除対象の違い
先ほどの表でも触れましたが、介護施設の種別によって医療費控除の扱いは大きく異なります。これは施設の設置根拠となる法律と、提供されるサービスの性質の違いによるものです。
医療・介護の一体型施設は控除の範囲が広い
老健(介護老人保健施設)は医療と介護が一体化した施設であり、施設サービス費の全額が医療費控除の対象となります。リハビリを目的とした入所が多く、医療的なサービスが中心となるためです。
特養(特別養護老人ホーム)は「介護老人福祉施設」として介護保険法に基づいて設置されている施設です。純粋な福祉施設という位置づけのため、医療費控除の対象は施設サービス費の1/2相当に限定されています。ただし、1/2相当とはいっても年間で大きな金額になることも多いため、きちんと申告する価値はあります。
有料老人ホーム・グループホームは判断が複雑
住宅型有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)、グループホームは、施設自体の利用料(家賃・管理費など)は原則として医療費控除の対象外です。しかし、そこで別途契約する訪問介護・訪問看護・通所リハビリなどの介護保険サービスについては、医療費控除が適用できるケースがあります。
このような施設に入居している場合、施設の月額請求書に加えて、訪問介護事業所などから届く別の領収書も保管しておく必要があります。請求元が複数になることが多いので、ファイリングの工夫が大切です。
詳しくは一人暮らしの親を施設に入れる時期と手順の記事でも施設選びのポイントを解説していますので、参考にしてみてください。
介護施設の領収書の保管期間で知っておくべき注意点

基本的な保管期間のルールを押さえたうえで、さらに知っておくべき注意点があります。亡くなった親の領収書をいつ捨てていいのか、領収書を紛失してしまったときの対応など、実際の場面で困りやすいポイントを解説します。
亡くなった親の介護費用と相続税の関係
親が亡くなった場合、介護施設の領収書は「もう不要だから捨ててしまおう」と思いがちです。しかし、これは大きな間違いです。
まず確認しておくべきは、相続税申告における「債務控除」の問題です。被相続人(亡くなった方)が介護施設に入居していた場合、入居中に発生した費用のうち、死亡時点でまだ支払いが済んでいない未払い費用は、相続財産から差し引ける「債務」として相続税を減らすことができます。
また、家族が立て替えて支払っていた介護費用についても、領収書があれば遺産分割協議の際に精算の根拠とすることができます。領収書がなければ「本当に払ったのか」という証明ができないため、泣き寝入りになるケースもあります。
亡くなった親の介護領収書の保管の目安
① 相続税申告が必要な場合:申告書の提出期限(死亡から10か月以内)の翌日から5年間
② 相続税申告が不要な場合:遺産分割協議の完了から少なくとも5年間
③ 死亡直前に家族が立て替えた費用の領収書:相続手続きが完全に完了するまで保管
私なら、亡くなった親の介護施設の領収書は、相続手続きがすべて完了してから最低5年は保管します。相続税の申告が不要であっても、遺産分割の内容に関して後日トラブルが生じた場合の証拠としても機能するからです。捨てるのを急ぐ必要はありません。
紛失した場合の再発行と代替書類の対応
保管していたはずの領収書が見当たらない、というケースは珍しくありません。そのような場合、どうすればよいのでしょうか。
施設に領収書の再発行を依頼する
介護施設によっては、過去の請求書や領収書を再発行してもらえる場合があります。施設側には介護給付費請求書等を5年間保管する義務があるため、過去5年以内の領収書であれば対応してもらえる可能性があります。まず施設の事務担当者に相談してみましょう。ただし、再発行に費用がかかる施設もあります。
銀行通帳・クレジットカード明細を代替書類として活用する
領収書の再発行が難しい場合、銀行の引き落とし履歴やクレジットカードの明細書が代替書類として認められることがあります。ただし、これはあくまで領収書の代替としての機能であり、税務署の判断によっては認められないこともあります。
実際のところ、医療費控除の申告時には領収書の提出は不要になっていますので、領収書がなくても申告自体は可能です。ただし、後日税務署から確認を求められた際に対応できる書類を手元に残しておくことが重要です。
補足:介護施設側の領収書の保管義務について
介護事業所(施設側)は、介護給付費の請求書や明細書を「サービス完結の日から5年間」保管することが義務付けられています(介護保険法関連の基準省令による)。一方、介護記録などについては「サービス完結の日から2年間」が基本ですが、自治体によっては5年間を求めるところもあります。家族が施設に領収書の再発行を依頼できるのも、この保管義務があるためです。
紙の領収書をデジタル保存する電子帳簿保存法
何年分もの介護施設の領収書を紙のまま保管するのは、スペース的にも管理的にも大変です。そこで知っておきたいのが電子帳簿保存法に基づくスキャン保存です。
電子帳簿保存法では、一定の要件を満たせば、紙の書類をスキャンまたはスマートフォンで撮影したデータで保存し、原本の紙を廃棄することが認められています。個人の場合も、医療費の領収書については以下の条件を満たすことでスキャン保存が可能です。
- 解像度200dpi以上でスキャン(スマートフォンのカメラでも対応可)
- カラー画像での保存(グレースケール不可)
- タイムスタンプを付与するか、または訂正・削除の履歴が残るシステムで保存
- 検索できる形でファイルを整理・保存する
実際には、多くの方が「スマートフォンのアプリで領収書を撮影して、クラウドストレージに整理して保存する」という方法を取っています。マネーフォワードやfreeeといった家計管理アプリにも領収書の撮影・保存機能があります。
ただし、個人の医療費控除に使う領収書については、法人の経費書類ほど厳格な要件が課されているわけではないため、実務上は「しっかりバックアップをとったデジタルデータを保存しつつ、念のため数年は紙も手元に残しておく」という運用でも問題ないと私は判断しています。
不要になった領収書の安全な廃棄方法
保管期間を過ぎた領収書は適切に廃棄することも大切です。介護施設の領収書には、氏名・住所・施設名・費用内訳など個人情報が多く含まれています。そのままゴミ箱に捨てることはせず、必ずシュレッダーにかけるか、溶解処理サービスを利用してください。
施設名や介護の記録が書かれた書類は、個人情報だけでなくセンシティブな要配慮個人情報にも該当します。廃棄のタイミングで情報漏洩が起きないよう、処理方法には細心の注意を払いましょう。
領収書の廃棄方法チェックリスト
□ 保管期間(原則5年)を確認してから廃棄する
□ シュレッダーか溶解処理で個人情報を保護する
□ 「相続手続き中」「税務調査の可能性あり」の領収書は廃棄を保留する
□ デジタルバックアップを取ってから廃棄する場合は、データの完全性を確認する
施設側と家族側で保管期間が異なる理由
「介護施設側は2年や5年の保管義務があるのに、なぜ家族側は自分で保管しなければいけないの?」という疑問を持つ方は多いです。これは目的が異なるためです。
施設側の保管義務は、主に介護保険の給付が適正に行われたかどうかを確認するためのものです。都道府県や市町村が実地指導・監査を行う際に必要な書類として、事業所が保管することが義務付けられています。
一方、家族側が領収書を保管する必要があるのは、主に以下の目的からです。
- 確定申告で医療費控除を申請するため(税法上の根拠)
- 税務署から確認を求められたときに対応するため
- 相続税申告や遺産分割協議の際の証拠とするため
- 施設との費用精算にトラブルが生じた場合の根拠とするため
施設側と家族側の保管目的がまったく異なるため、保管期間の根拠となる法律や基準も異なります。「施設が保管しているから自分は保管しなくていい」という考え方は誤りです。施設が保管している書類は施設のもので、家族が任意に閲覧・取得できるものではないからです。
また、施設には介護記録について2年間の保管義務しかない場合が多く、5年後に再発行を依頼しても対応できない施設もあります。やはり、家族側が自主的に領収書を保管することが不可欠です。
介護施設の費用や費用管理について詳しく知りたい方は、ベネッセ老人ホームのランク完全解説|7シリーズの費用と選び方の記事も参考にしてみてください。施設ごとの費用体系を理解しておくと、領収書の内訳を確認する際にも役立ちます。
なお、医療費控除の詳細な手続きについては、(出典:国税庁「医療費控除に関する手続について」)をご確認ください。
まとめ:介護施設の領収書は保管期間を守って適切に管理しよう

介護施設の領収書の保管期間について、重要なポイントを改めて整理します。
- 医療費控除を申請した領収書は確定申告の期限から5年間保管が必要(国税庁の規定)
- 施設種別によって医療費控除の対象範囲が異なるため、すべての領収書をとりあえず保管しておくことが安全
- 亡くなった親の介護費用の領収書は、相続手続き完了後も最低5年間は保管する
- 紛失した場合は施設への再発行依頼や、銀行通帳・クレジット明細での代替を検討する
- 電子帳簿保存法に基づくスキャン保存を活用すれば、紙の管理負担を軽減できる
- 保管期間が過ぎた領収書はシュレッダー等で個人情報を保護したうえで廃棄する
介護施設の利用にかかる費用は月ごとに積み重なり、年間ではかなりの金額になります。その分、医療費控除を正しく申告できれば税負担の軽減につながります。そのためにも、介護施設の領収書の保管期間をきちんと理解して、計画的に管理することをおすすめします。
「いつ捨てていいか分からないから全部取っておく」というのも一つの考え方ですが、何年分もの書類がたまるとかえって管理が難しくなります。5年という目安を軸に、目的別に整理しながら保管する習慣をつけておくと安心です。
施設探しでお悩みの方へ
「何から始めればいいか分からない」「費用が心配」「急いで施設を探している」など、介護に関するお悩みは一人で抱え込まないでください。
福岡介護ナビでは、福岡県内の老人ホーム・介護施設に関する情報をまとめています。まずは情報収集から始めてみてください。
※本記事の内容は、私自身の知見や一般的な情報提供を目的としており、特定の施設・サービスを推薦するものではありません。正確な情報は公式サイトや担当窓口にてご確認ください。最終的な判断は専門家や担当のケアマネジャーにご相談ください。